肩には三角筋という筋肉があります。これは前部、中部、後部の三つの線維に大別することができます。
全てが同時に働くと肩関節外転と言って、”気をつけ”の状態から腕を耳につける動きをします。

一方で前部が働くと屈曲と呼ばれる、からだの前から腕を上げる動きを、後部が働くと伸展と呼ばれる手を後ろに持ち上げるリレーのバトンをもらうような動きをします。

この中で中部線維は独特の構造をしていて、専門的には多羽状筋と呼ばれる筋肉の形態をしています。

このような形状は筋肉の出力を高めるのに適しているので大きな力を発揮できるのですが、筋肉の中に腱状の部分を多く含むのが特徴でもあります。

腱とは通常筋肉の両端に存在する硬い紐状の組織なのですが、こうした硬い組織が筋肉の中央部にも混在しているのが多羽状筋です。

これは通常であれば出力を高めるのに役立っているのですが、不具合が起きてしまった際に少し面倒なことになります。その代表例が五十肩です。

五十肩とははっきりした原因が不明のまま肩の痛みに始まり、やがて可動域を大きく制限してくるのが特徴的な疾患ですが、治る直前の段階ではしっかりと肩を動かして筋肉に柔軟性を取り戻させることが重要になります。



しかしながら多羽状筋は、元々筋肉の中に硬い腱状の組織を含むため、他の筋肉に比べてなかなか柔軟性を出しにくいという特徴があります。この三角筋中部線維が硬いままだと、腕を上げる際に必要不可欠な動きでもある上腕骨を肩甲骨に引き寄せる動作を邪魔してしまい、いつまでもしっかりと肩を動かすことができない原因になってしまいます。



通常しっかりと動かしていけば可動域に改善が見られてくる五十肩ですが、最後にこの部位が邪魔をしていつまでもスッキリしない、ということ状態は臨床的によく見られます。この部位に関しては手技による介入が効果的ですので、なかなか治りきらない五十肩などの場合はこうしたことが起きていないか一度確認して必要な処置を受けるようにしてみてください。

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