PMSや更年期について、「女性ホルモンの変化が原因」と説明されることがあります。

しかし、それだけでは、なぜ気分が落ち込むのか、眠れなくなるのか、むくみや頭痛、関節痛が起こるのかは十分に理解できません。

ホルモンとは、血液を通じて全身に運ばれ、細胞に働き方を伝える情報伝達物質です。

ホルモンを受け取るための「受容体」を持つ細胞だけが、その影響を受けます。そのため、女性ホルモンは子宮や卵巣だけでなく、脳、骨、血管、筋肉、皮膚など、全身に働きかけます。

月経周期は脳と卵巣の共同作業

月経周期は、卵巣だけで作られるものではありません。

まず脳の視床下部からGnRHが分泌され、それを受けて脳下垂体からFSHとLHが分泌されます。これらが卵巣に働きかけ、エストロゲンやプロゲステロンの分泌を調節します。

エストロゲンは子宮内膜を厚くし、骨や血管、皮膚、脳の働きにも関係します。

排卵後に増えるプロゲステロンは、子宮内膜を維持し、基礎体温や水分調節、睡眠や気分にも影響します。

妊娠しなかった場合は、エストロゲンとプロゲステロンが低下し、子宮内膜が剥がれて月経が起こります。

PMSは「変動」、更年期は「変動と不足」

PMSと更年期は似た症状が現れますが、ホルモン変化の特徴が異なります。

PMSでは、排卵後から月経にかけてエストロゲンとプロゲステロンが急激に変化します。ホルモンが不足しているというよりも、短期間に大きく変動することが症状に関係します。

一方、更年期では卵巣機能が徐々に低下します。

初期には排卵が不規則になり、プロゲステロンが減少し、エストロゲンも大きく変動します。その後、エストロゲンの分泌そのものが減っていきます。

つまり更年期では、ホルモンの「変動」と「不足」が重なるため、症状が複雑になりやすいのです。

ホルモン変化によって起こる症状

女性ホルモンの変化は、さまざまな心身の症状に関係します。

気分の落ち込みやイライラには、セロトニンやGABAなど、脳内の神経伝達物質の変化が関わります。

睡眠障害には、プロゲステロンの変化に加え、更年期のホットフラッシュや夜間発汗も影響します。

むくみは水分やナトリウム調節の変化、頭痛はエストロゲン低下による血管反応や炎症反応の変化が一因となります。

また、エストロゲンの減少は、関節や筋肉の違和感、骨密度の低下にも関係します。

ただし、これらの症状をすべてホルモンだけで説明することはできません。

症状はホルモンだけで決まらない

症状の現れ方は、

ホルモンの変化 × その人の体質 × 現在の身体のコンディション

によって変わります。

同じ年齢、同じ月経周期でも、症状の強さが人によって異なるのは、ホルモンに対する感受性や、睡眠、ストレス、疲労、栄養、運動量などが違うからです。

そのため、ホルモンそのものをコントロールしようとするだけでなく、ホルモンの変化を受け止められる身体の状態を整えることが重要です。

十分な睡眠、適度な運動、規則的な食事、アルコールやカフェインの見直しなどは、そのための基本的な対策になります。

症状が強く、日常生活に支障が出ている場合には、我慢せず婦人科などの医療機関に相談することも必要です。

身体の「働き」を理解する

解剖学が身体の構造を学ぶ学問だとすれば、生理学は身体がどのように働いているかを学ぶ学問です。

PMSや更年期の不調は、画像や姿勢だけでは説明できないことがあります。

ホルモンがどこから分泌され、どの細胞に届き、身体の働きをどのように変えるのか。

その流れを知ることで、女性の不調を「気のせい」や「年齢のせい」で終わらせず、身体の中で起きている変化として理解できるようになります。

一方で、何でもホルモンのせいにせず、生活習慣やストレス、病気の可能性も含めて全体を見ることが大切です。

生理学は、症状に一つの原因を当てはめるためではなく、複雑な身体の変化を整理し、適切な生活ケアや医療につなげるための土台になる知識です。

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