動することが体に及ぼすメリットには様々なものがあります。
今回は運動する時間帯が体に及ぼす影響を紹介していきます。
ホルモンとは?
こう言ってしまっては身も蓋も無い気もしますが、人間の心身はホルモンに支配されています。
ホルモンの分泌状況次第で心や体に様々な変化が起きるのが人間です。
ホルモンとは簡単にいうとタンパク質や脂質でできた液体のことで、血液に混ざって全身を巡ります。
脳や甲状腺、副腎、卵巣といった組織から分泌されているという点は聞いたことがある方も多いかもしれませんね。
各組織にはそれぞれのホルモンがくっつける独自の鍵穴のようなものがあり、この鍵穴にホルモンがくっつくと何かしらの反応が生じます。
合わない鍵穴の組織にはホルモンは何も作用しません。同じホルモンが様々な組織に作用することがわかっています。
1日の活動を始めるために分泌されるホルモン
起床時には体にスイッチを入れるホルモンが分泌されます。
このホルモンはコルチゾールと呼ばれ副腎から分泌されます。
コルチゾールは一般にストレスを受けると分泌が増えるホルモンとしても知られているので、体を壊すイメージを持たれていることも少なくありませんが、実際にはストレスを受けた時に体を守るために分泌されています。
問題はこのホルモンが長期間にわたって分泌された場合です。
こうなると心身に様々な悪影響を及ぼすことになりますが、正しく分泌されていれば問題ありません。
アデノシンとコルチゾール
コルチゾールにはいろいろな働きがありますが、その一つが覚醒作用です。
前回カフェインの話でアデノシンという物質を紹介しました。
アデノシンは朝少なくて、1日活動する中で徐々に増えていき、細胞と結合して疲労感を生じ、睡眠圧を高めて夜眠りにつくのを助けてくれる働きがあります。
これに対しコルチゾールは反対に朝が最も高くなり、1日活動していく中で徐々にその量を減らしていきます。
そして朝目覚める前から徐々に増えてきて、起床時に最も高く分泌されるという特徴があります。
このホルモンが夜明けからしっかりと分泌されると起床時にスッキリ目が覚める訳です。そして夜に向けて量を減らすことでスムーズに眠りにつくことができます。
コルチゾールの分泌量を瞬間的に高める方法
コルチゾールが起床時に最も高くなる現象をCAR(Cortisol Awakening response)と呼びます。
また運動後にもコルチゾールは一時的に上昇します。
ですので朝CARが起きているタイミングで運動をすると更にコルチゾールの分泌を高めることがわかっています。
この時、特に高強度の運動であればあるほどコルチゾール濃度は高まります(とはいえ朝から強度の高い運動をすると心血管系には大きなストレスがかかりますのでこの点には留意が必要です)。
こうした理由により、起床後すぐのタイミングで一気にコルチゾールのレベルを高めると朝からしっかり頭が働くようになります。そして夜に向けて下降していく勢いも高まりますので、夜の寝つきもよくなります。
実際には高強度の運動を朝に行うことには心血管系のリスクに加えて疲労の観点からも難しい方も少なくないかもしれません。
もちろんウオーキングなど軽度の運動でもCARを加速させる効果は十分にありますので、高強度でなくても活動する方が良いです。そうすることで一日の始まりをエネルギッシュにでき、夜に程よく疲れて眠りやすいサイクルが作れます。
とはいえ朝型、夜型という個人の持つ遺伝的要因などもありますので、皆が無理して朝から動く必要はないと思いますが、生理学の視点から見るとこうした反応が体内で起きていることを知っておくと役に立つ場面もあると思いますので、活用して見てください。
まとめ
・ホルモンとはタンパク質や脂質でできた液体のことで、血液に乗って全身を巡り、各ホルモンとくっつける鍵穴をもった組織にだけ作用し、そこで様々な生体反応を引き起こす
・コルチゾールというホルモンがあり、ストレスを受けた時に分泌されることがよく知られている。そのためストレスホルモンとも呼ばれるが、実際には体をストレスから守るために分泌されている
・コルチゾールの問題は慢性的に分泌されるようになった時に心身に不調を引き起こすことであり、一時的に分泌されるのは問題ない
・コルチゾールは起床前からその分泌量が増え、起床後に最大限分泌される。この反応をCARと呼ぶ。この反応があるおかげで起床後の心身に活動スイッチが入る
・コルチゾールの分泌量は1日かけて低下していく。分泌量が減ることで夜スムーズに眠りにつけるようになる
・運動後、特に高強度の運動後にコルチゾールの分泌が一時的に高まる。なので起床後に運動するとCARをさらに加速する作用があり、心身ともに活動的になり、夜には程よい疲労感で眠りやすくなる